ベトナムツアーの最終日はハイライトのハロン湾クルーズ。ハロン湾の風景はこれまでにも写真などで見ているが、川と海との違いこそあれ、中国の桂林によく似ている。地質学的にも桂林と同じ石灰岩台地で、台地が海に沈下したのがこのハロン湾である。湾に浮かぶ島や奇岩の数は約3000といわれる。
水上生活者の村もあり、そこには公立の学校もあるという。クルーズ船に乗ってしばらくすると島に上陸し、100段あまりの階段を上って鍾乳洞に入る。ハロン湾に浮かぶ島々には、ほかにも鍾乳洞のある島があるらしいが、ここティエンクンの鍾乳洞が一番規模が大きいのだろう。ティエンクンとは感じで書けば「天宮」という意味。ちなみにハロン湾は「下龍湾」だ。鍾乳洞の内部はあちこちに赤、青、黄、緑などの照明が当てられ
(人工的だが)幻想的な雰囲気を演出している。鍾乳石の一つ一つをマリア像や仏像、動物などに見立てるのも世界各地で見る鍾乳洞と同じだ。
鍾乳洞の後、再び乗船して海上の魚市場へ。ここにはすでに多くのクルーズ船が到着しているが、船と船のあるかないかの隙間に強引に割り込んでいく。なんでもやればできるもので、こんな隙間に入り込むのは到底無理だろうと思っていたのが着岸できてしまう。魚市場には蛤、蝦蛄、海老、その他さまざまな魚が生簀に入れられている。何しろ生簀の中は海水そのもので、海から上がったばかりだから
新鮮さは申し分ない。ここで買った魚類は船で調理し、昼食の時に出してくれる仕組みだ。われわれは一匹4ドルの蝦蛄を求める。
鍾乳洞と同様、奇岩にも名前がつくものもある。右の写真は「キスをする鶏」なのだそうだ。甲板にはデッキチェアもあり、夏ならここで休めば気持がよいだろう。冬の海はさすがに風が冷たいが、ホイアンやフエのような中部都市の方が寒かったような気がする。二年前に来たのは11月だが、もっと暑かったような記憶がある。
実際今回も、ホーチミンは30度以上だったが、中部に移ってからは用意してきた半袖は着る機会がなく、ダウンジャケットまで着こむ始末だ。
昼食には、通常のコースに加え、さっき魚市場で買った蝦蛄が料理されて出される。ベトナムに来てからは、食事時の飲み物はずっとビールだったが、今回の船上ランチではベトナムワインを注文してみた。ビールは3ドル、ワインは5ドルだからちょっと贅沢だ。そういえばベトナムでは現地通貨のドンもあるが、ほとんどの支払いは米ドルでできる。
3月に出張で行ったカンボジアでもミャンマーでもそうだった。結局ドンは使わずじまいだったが、ゼロを二つ取って半分にするとだいたい日本円と同じという換算だ。
ハノイから付いたガイドのトイさんは、ヒュー君と比べるとかなりベテランで、説明も要領を得ている。クルーズの後に立ち寄った民芸品店(このツアー、やたらに土産物店などに寄るが、そうしたところでないと清潔なトイレがないので仕方がないのだろう)について、「ここもベトナム戦争と関係があります。枯葉剤や地雷の被害者が働いてい
て、売り上げの一定割合がそうした人たちの生活を支えています。」とのこと。
ハロン湾から再び4時間かけてハノイに戻るが、その途中、ハノイに着く30分くらい手前のバッチャンという村に立ち寄る。この辺りは良質の白粘土が採れるので、これを利用した陶器産業が盛んだ。型に水で溶いた粘土を流し込み、高温のガス窯で焼き上げるバッチャン焼きの陶器は日本でも売られている。
バスがハノイに入ると、さすがに首都だけあって交通量が格段に増える。前回もそうだがベトナムでいつも目に着くのはオートバイの数の多さだ。ガイドのトイさんによれば、彼の友人でベトナムに住んでいる日本人は、ベトナムに来てから数年になるが一度も自動車事故を起こしたことがないそうだ。つまり、あまりのオートバイの数と運転マナーに恐れをなし、国際免許はもっているがこの国で運転したことがないからだ。もっともハノイやホーチミンでは交通渋滞でスピードが出せないので事故は少なく、むしろ郊外の方が問題だという。ハノイは昨年(2010年)に建都1000年を迎えたので、
その記念事業としてハノイの主要道路5kmにわたって陶器の絵タイルが貼られた。これはギネスブックにも登録されているそうだ。そういえば2010年は日本でも平城遷都1300年だった。
ホーチミンでも大教会と中央郵便局しか見るところがなかったが、ハノイではここで一泊もしないこともあって、見たのはタンロン城くらいのもの。ホーチミン廟とホアンキエム湖はバスの窓から眺めただけ。前回出張で来た時も、まったく観光の時間がなく、気の毒に思った支店長がホーチミン廟だけは車で案内してくれたのを覚えているが、それも車窓からだった。
タンロン城にしても中が修復中で立ち入り禁止となっており、北門の前で説明を聞き、写真を撮っただけ。今回のツアーは「5つの世界遺産を巡る」というタイトルが付いていて、世界遺産はホイアン、ミーソン、フエ、ハロン湾と、あとひとつはどこだろうと思っていたら、このタンロン城だった。タンロンとは感じで書けば「昇龍」で、ハノイの古名。2010年8月に世界遺産に指定され、建都1000年を記念して部分的に公開されたばかりだ。